soy-curd's blog

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グレッグ・イーガン「ゼンデギ」読んだ

グレッグ・イーガンのゼンデギ読んだ。前半がイランの革命パート、後半が主人公の脳みそをゴリゴリ未来のソシャゲ『ゼンデギ』にコピーしていくパート、という構成。短篇集の「祈りの海」の『キューティ』の中で、擬似赤ちゃんを育てる男の話が出てくるけど、ゼンデギはその裏返しで、お父さんが擬似お父さんを頑張って作る話になっている。お父さんは癌みたいなやつにかかっていて、死ぬまでに息子のために自分のコピーを作りたいらしい。それでお父さんは脳科学者に頼んで新しいお父さんを作ってもらおうとするんだけれど、でもコピーを作るのはなかなか難しいんだよなあ...ってことを500pぐらいかけて読者に教えてくれる。解説にも書いてあるけれど、話のエッセンスが第一章に凝縮されていて、お父さんの会話相手の言葉、

「時間と注意深さがあれば正しいかたちで残せないものはありませんが、それだけの根気がある人はいないんです」

と言っていて、これはレコード盤をwavにコピーするときの話なんだけれど、要はそういう概念に対する問いかけが本書の核。アイデンティティと技術と倫理の狭間で人類がどのような行動を取るか、イーガンが全力でシミュレーションしていて、熱い。将来的に不死を目指している人はぜひ読むべきだと思います。

ゼンデギ (ハヤカワ文庫SF)

ゼンデギ (ハヤカワ文庫SF)

祈りの海 (ハヤカワ文庫SF)

祈りの海 (ハヤカワ文庫SF)