今日の小説
ぐんまちゃん小説
私はぐんまちゃんにこのあいだ会ったのだけれど、近くで見ても、本当にこの赤い丸が口なのか、確信を得ることができなかった。ぐんまちゃんに聞こうとも考えたのだが、ぐんまちゃんは喋ることが許されていないため、答えを得ることができない。仕方がないので、私は、ぐんまちゃんとおでかけすることにした。一緒に時間を過ごすことで、ぐんまちゃんの顔の赤い部分が、鼻などではなく、きちんと口に見える瞬間が訪れると考えたのだった。ぐんまちゃんは虫取りに行きたいようだったので、私は車で三十分の雑木林まで連れて行った。夕方、私はぐんまちゃんに樹の側に立ってもらい、とても明るいライトをぐんまちゃんのおなかに当てた。暗くなるに従い、アオカナブン、シロテンハナムグリ、ゴマダラチョウ等が集まってきた。完全に夜になると、暗い森の中で、ぐんまちゃんだけがぼうっと明るくなり、蛍光を発する茸のようになった。お目当てのカブトムシがやってきたころには、ぐんまちゃんも疲れていたのか、目を閉じてすやすやと眠ってしまっていた。
- 作者: 群馬県(協力),河野英喜
- 出版社/メーカー: 中経出版
- 発売日: 2013/06/12
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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