soy-curd's blog

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群馬小説その2

 群馬県は日本で最も長い海岸線を保持していると言われている。しかし、誰もその正確な長さを計測した人はいない。そんなことをやっている暇があるならば、ドライブ、ソフトボール、二月前にクリーニングに出した服を取りに行くなど、他に有意義なことがいくらでもあるからだ。だが私たちはそれらのことを全てやり尽くし、暇だった。「今度の休みどうする?」とルゥは聞いた。私は群馬県の誇る海岸線について、それらが諸事情により上毛カルタに取り入れられなかったこと、について細々と話した。「じゃあわたしらで測ろうよ」とルゥは言った。「登ろう、榛名山
 榛名の頂上に辿り着いた私たちは、目の前に広がる雄大な海に、しばし呆然とした。対岸の見えない程の大量の水を、今まで見たことがなかったのだ。それは足元に広がる深い空だった。私たちは聖女に触れようとする目を病んだ老婆のように、恐る恐る、海岸線を歩いた。歩幅を一定にすることで、後に一歩の長さを計算すれば、全体の長さがわかるという寸法だ。私たちは隣の県境まで歩いて行くと最初に決めていた。あらかじめ分っている値を参考にすると、少なくとも八十時間程は歩かねばならない。私たちは期待に胸を膨らませて出発した。しかし、三時間も歩くと、私たちはもとの場所に帰ってきてしまった。「スタート地点じゃないか」と私は毒づいた。「言ってた話と違うじゃん」ルゥも不満そうだった。「どういうこと?」
 そのとき、私は戦慄した。私はおろおろと周りを見渡した。「どうしたの?」とルゥは心配そうに見てくる。
 私は気づいてしまったのだ。この世に海なんて存在しないということに。